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カテゴリー: 決算

【決算速報】EPS43%減でも株価は耐えた?ダブルエー(7683)の「理論株価」と「現実」の乖離を、電卓で計算。

【決算速報】EPS43%減でも株価は耐えた?ダブルエー(7683)の「理論株価」と「現実」の乖離を、電卓で計算。

運用するポートフォリオの主力、その一角を担うダブルエー(7683)から、10月締めとなる第3四半期決算が発表されました。

「増収減益」の決算。 さらに、通期業績予想の下方修正まで発表されるという展開になりました。 ダブルエーでここまで明確な下方修正が出るのは、個人的にはかなり久しぶりな印象を受けます。

普通なら「明日は暴落か……」と身構えるところですが、本日(決算翌日)の株価を見てみると、なんと2%程度しか下げていません。 EPS(1株益)はガッツリ削られたはずなのに、この底堅さは一体何なのか?

ちょっと気になったので、今回は速報として、「電卓1個」で弾き出せるシンプルな数字を使って、この不思議な株価の動きを検証してみたいと思います。

決算ハイライト:売上は最高、でも利益は……

まずは決算短信の数字(ログ)をサクッと確認します。 第3四半期累計(8月〜10月)の成績は以下の通りでした。

売上高は前年を上回り過去最高を更新していますが、円安進行に伴う仕入原価の上昇や、人件費・物流コストの増加が響き、利益面では苦戦を強いられています。

電卓で検証①:「理論株価」は784円?

そして今回、最もインパクトがあったのが通期予想の下方修正です。 これによるEPS(1株当たり純利益)の変化を電卓で叩いてみました。

  • 修正前 EPS(従来予想): 77.44円
  • 修正後 EPS(今回発表): 43.63円
  • 減少率: ▲43.66%

利益の源泉であるEPSが4割以上も減少しました。 ここで一つの仮説計算をしてみます。

「もし、市場の期待値(PER)が変わらないとしたら、株価はいくらになるべきか?」

決算前の株価(1,391円)を基準に、EPS減少分だけ割り引いてみます。

理論株価 = 1,391円 × (1 – 0.4366) ≒ 784円

計算上は、700円台まで暴落してもおかしくない内容でした。 しかし、本日(決算翌日)の終値は1,363円。 下落幅はわずか▲2.37%(-33円)で耐えています。

計算上の「理論値(784円)」と「現実(1,365円)」の間には、約1.7倍もの乖離があります。このギャップは何なのでしょうか?

電卓で検証②:PERは18倍から31倍へ

株価が下がらなかったということは、その分、割高になったことを意味します。 決算前後でPER(株価収益率)がどう変化したか計算してみます。

  • 決算前PER: 1,391円 ÷ 77.44円 ≒ 17.9倍
  • 決算後PER: 1,365円 ÷ 43.63円 ≒ 31.1倍

PERは約18倍から31倍へ跳ね上がりました。 アパレル小売業でPER 30倍超えというのは、一般的にはかなり強気な評価です。 しかし、「高すぎる」と切り捨てる前に、もう一つの計算式を試してみることにします。

電卓で検証③:もし株価が下がったら「利回り」はどうなる?

ここまではPER(利益)からの計算でしたが、次は「優待利回り」から逆算してみましょう。

ダブルエーの株主優待は「靴1足(約8,000円相当)」、配当金は年間17円(100株で1,700円)です。 つまり、100株保有時の総還元額は約9,700円相当になります。

もし、PERの計算通りに株価が「784円」まで下がったとしたら、利回りはどうなるでしょうか?

総利回り = 9,700円 ÷ 78,400円(取得価格) ≒ 12.3%

優待込みとはいえ、利回り12%超えという異常な数字になってしまいます。 今の日本株市場で、これだけ強力な実物優待がありながら利回りが10%を超えるような状態になれば、間違いなく「強力な買い」が入ります。

そう考えると、以下の仮説が成り立ちます。

  • PER視点: 31倍は確かに高い。
  • 利回り視点: 株価が下がりすぎると「異常な高利回り」になるため、これ以上は下げられない。

「PER30倍は高すぎる」という見方がある一方で、「優待がある限り、この株価水準は妥当(これ以上下がると安すぎる)」という見方もまた、真実なのだと思います。

なぜ株価は耐えたのか?(因数分解の試み)

以上の計算から、今の株価1,358円が維持されている理由を因数分解してみます。

  1. トップライン(売上)の強さ: 11月月次売上が前年同月比124%と好調で、本業の成長自体は止まっていないこと。
  2. 悪材料出尽くし: 減益要因が一時的なコスト(事業譲受や移転)中心であり、止血したという見方。
  3. 岩盤となる需給(優待): そしてやはり、「株価が下がると利回りがバグる」という構造的な下値支持です。 過去のログを見ても、ダブルエーは権利落ち後に株価が大きく下落する傾向があります。裏を返せば、権利確定前にはそれだけ強烈な買い需要が株価を支えているということです。

「成長期待」と「一時的要因」、そして「利回りのフロア」。 これらが複雑に絡み合って今の株価を形成しています。 特に今回は、PERによる割高感よりも、優待利回りによる下値の堅さが勝った形と言えそうです。 エンジニア投資家としては、ここをもう少しロジカルに説明できる「納得のいく因数分解」を試みてみるのが今後の検討課題、と考えています。

株価は分からないが、企業は分かるかもしれない

これから株価がどうなるかという「予定」については、投資家それぞれにナラティブ(物語)があると思います。

株価というものは、無数の要因が絡み合い、短期的にはぐちゃぐちゃに動くものです。 私ごときが電卓で因数分解しようとしても、「株価の動き」自体は分からないでしょう。

ただ、「企業がどういう状態なのか」については、公開されたログ(決算書)を読み解くことで、ある程度分かるかもしれません。 株価の乱高下に一喜一憂するのではなく、ポートフォリオの一角を担う企業の実態を、引き続き冷静に監視していきたいと思います。


【免責事項】 本記事は個人の分析・感想であり、将来の株価変動を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。数値は2026年1月期第3四半期決算短信および直近の株価データに基づきます。

2025.12.15適時開示2026年1月期 第3四半期決算補足説明資料

2025.12.15適時開示連結業績予想の修正に関するお知らせ

2025.12.15決算短信2026年1月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

2025.12.01適時開示2026年1月期11月度単体月次概況(速報)のお知らせ

2025.09.12決算短信2026年1月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)