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作成者: きりしま

きりしま 40代半ば。これまでは米国株や金など、インデックス積立投資を中心に、合理的な資産形成を行ってきました。 しかし、これからはもっと主体性を持った投資がしたいという想いから、日本株の個別株投資に挑戦しています。 このブログは、企業が持つ「想い」や「ぬくもり」、そして価値を、自分の頭で悩み、考え、長期で応援していくための「思考ノート」です。 専門的な分析はできませんが、銘柄選定の理由や売買の意思決定をすべて言語化し、自分の判断力を磨くための「日誌」として活用していきます。 【投資方針】 対象: 日本株の「割安でありながら、将来の成長性も期待できる銘柄」 期間: 5年、10年といった超長期での保有を前提とした投資 どうぞ、よろしくお願いいたします。
「利益率」だけで株を買うな。アパレル5社のエンジンを「ROIC」で分解してみた。

「利益率」だけで株を買うな。アパレル5社のエンジンを「ROIC」で分解してみた。

企業の「稼ぐ力」を測る指標として、最近よく耳にするROIC(投下資本利益率)。

計算式とか出てくると「うっ」となる人もいるかもしれませんが、エンジニアの私にとって、これほど面白いおもちゃはありません。

特に在庫という「生鮮食品」を扱うアパレル業界において、ROICは企業の「性格」を丸裸にします。

単に利益が出ているかだけでなく、「手持ちの資金(在庫や店舗)を、どれだけのスピードで回転させているか」という経営の質(エンジンの性能)が見えてくるからです。

今回は、私が注目するアパレル・靴小売5社をまな板に載せ、そのビジネスモデルをROICというメスで解剖してみます。


分析の視点:ROICを「分解」する

ROICという数字単体を見ても面白くありません。これを以下の2つの要素に分解します。

【ROICの正体】

ROIC = ① 利益率(パワー) × ② 回転率(スピード)

  • ① 利益率: 売上に対してどれだけ利益を残せるか。(ブランド力、原価抑制)
  • ② 回転率: 在庫をどれだけ速く現金に変えられるか。(販売効率、在庫管理)

要は、「重い荷物を運ぶダンプカー(高利益率)」なのか、「身軽に走り回るスポーツカー(高回転)」なのかを見極める作業です。


1. 「スピード」で殴るスポーツカーたち

まずは、圧倒的な「資本回転率(Speed)」で数字を稼いでいるグループです。

yutori (5892)

  • ROIC:約 12.3%
  • タイプ:超・高回転型

この会社、とにかく速い。回転率は2.19回と驚異的です。

SNSマーケティングを駆使して、「作った瞬間(あるいは作る前)に売る」ようなドロップ形式をとっているため、在庫が倉庫で埃を被る暇がありません。

借入金を活用してM&Aを繰り返す「アセットライト志向」も相まって、少ない資本を高速回転させて利益を生み出しています。まさにF1マシンです。

ダブルエー (7683)

  • ROIC:約 9.7%
  • タイプ:管理されたスピード

婦人靴「ORiental TRaffic」を展開。ここも回転率1.90回と相当速い。

yutoriと違うのは、財務がコンサバ(借金少なめ)である点です。厚い自己資本を持ちながらこの回転率を維持しているのは、在庫管理能力が高い証拠。

「無理して飛ばしている」のではなく、「制御された速度」を感じます。

2. 「パワー」で押し切る重戦車

回転率はそこそこですが、圧倒的な「利益率(Power)」で高ROICを叩き出す企業です。

エービーシー・マート (2670)

  • ROIC:約 11.8%
  • タイプ:要塞型・高収益モデル

回転率は1.01回。yutoriの半分以下です。全国にリアル店舗網を持ち、在庫をどっさり抱えているので、どうしても動きは鈍くなります。

しかし、営業利益率は約16.8%と業界トップクラス。

なぜか? NB(ナショナルブランド)の限定品や、利益率の高いPB(VANSなど)が売れまくるからです。「値引きしなくても客が来る」というブランド力が、回転の遅さを補って余りある利益を生んでいます。

3. バランスお化け(ハイブリッド)

スピードとパワー、両方を兼ね備えた「完成形」です。

ファーストリテイリング (9983)

  • ROIC:約 15.6%
  • タイプ:規模 × 効率の怪物

ユニクロです。ABCマート並みの高利益率(16.1%)を確保しつつ、回転率も1.44回と高水準。

通常、これだけ巨大化すると組織も物流も鈍重になるはずですが、RFIDタグの全品導入や物流自動化で、むしろ効率が上がっています。

「象がチーターの速さで走っている」ようなもので、競合からすれば悪夢でしょう。

パルグループホールディングス (2726)

  • ROIC:約 14.5%
  • タイプ:ポートフォリオの妙

「3COINS(雑貨)」と「アパレル」の二刀流。

単価は安いが回転が爆速の雑貨事業(回転率2.01回!)が全体を牽引し、利益率の高いアパレルがそれを補完する。

性質の異なる2つの事業を組み合わせることで、全体として高ROICを実現しています。経営の手腕が光ります。


まとめ:数字の「中身」を見よう

今回分析した5社を整理すると、勝ちパターンが全く違うことが分かります。

企業名ROIC目安勝因(ドライバー)
ファストリ15.6%全部強い(反則級)
パルグループ14.5%雑貨のスピード + 服の利益
yutori12.3%SNS活用による超・回転力
ABCマート11.8%圧倒的な利益率とブランド
ダブルエー9.7%在庫管理による効率化

「ROICが高いから買い」と飛びつく前に、その数値が「マージン(利益)」で作られているのか、「回転(効率)」で作られているのかを確認する。

そうすることで、その企業が不況になった時に「値下げ圧力を受けやすいのか(利益率型のリスク)」、「在庫余りを起こしやすいのか(回転型のリスク)」が見えてきます。

さて、各社の「実力(ROIC)」は分かりました。

問題は、この実力に対して、現在の株価(バリュエーション)が「お買い得」なのかどうかです。

優秀な会社でも、高値で掴めば投資家は死にますからね。

次回の記事では、この5社の「割安性(PER/PBR)」について、冷徹にジャッジしていこうと思います。

日中関係悪化でホテル株が急落。パニック売りの横で、静かにREITを買い増した理由。日中関係悪化でホテル株が急落からのREITを買い増し

日中関係悪化でホテル株が急落。パニック売りの横で、静かにREITを買い増した理由。日中関係悪化でホテル株が急落からのREITを買い増し

昨日から今日にかけて、市場が騒がしいですね。 高市総理の発言に対し中国政府が抗議したことで、インバウンド関連、特にホテル株が「売り一色」の展開となりました。

市場は悲観のどん底にいるようですが、私はこの急落を「オーバーシュート(売られすぎ)」だと捉えています。 みんなが逃げ出している火事場ですが、実は火元は大したことないんじゃないか? そう考え、あえてJ-REIT(ホテル系)を少し買い増ししてみました。

もちろん、落ちてくるナイフを掴んだ可能性もゼロではありません。 ただ、自分なりに過去のデータと現状を整理し、「リスクに見合うオッズだ」と判断したプロセスを備忘録として残しておきます。


1. 何が起きているのか(ヘッドラインへの過剰反応)

まず、事実確認(ファクトチェック)です。 株価急落のトリガーは「中国政府による渡航自粛の呼びかけ」という報道です。

ここで重要なのは、現時点では「渡航禁止(ビザ発給停止)」という強制力のある措置までは至っていないという点です。

しかし、最近の株式市場はアルゴリズム取引が支配しています。 「中国」「日中関係悪化」「自粛」 こうしたネガティブなキーワードをAIが感知し、機械的に売り注文を浴びせている可能性が高い。 中身を精査せず、見出しだけで反応する「条件反射的な売り」であるなら、そこには歪みが生まれているはずです。


2. 「2012年の悪夢」を再検証する

ここで少し冷静になるために、歴史を紐解きます。 最も近い事例として、「2012年9月の尖閣諸島国有化」当時の状況を思い出してみましょう。日中関係が戦後最悪レベルまで冷え込み、激しい反日デモが起きたあの時です。

では、その時、訪日中国人は「ゼロ」になったのでしょうか? 日本政府観光局(JNTO)の統計データを確認してみました。

  • 国有化直後(2012年10月〜12月):前年同月比 約33%〜44%減

確かに大きな打撃です。しかし、逆に言えば「半分以上は維持されていた」のです。 ビジネス客や個人旅行客(FIT)の往来までは完全には止まらなかった。あれほどのデモが起きても、人の流れはゼロにはならない。これが歴史の教訓です。


3. 「総崩れ」は起きないという算段

この過去データを踏まえ、私は以下のシナリオを立てました。

① 中国はもはや「絶対王者」ではない 現在の訪日客数のトップは韓国であり、中国は2番手です。ポートフォリオは分散されています。

② 他国・国内がカバーする 中国人が来なくても、韓国、台湾、欧米、国内の客足が遠のく理由はありません。

仮に2012年同様に中国客が4割減ったとしても、インバウンド全体から見れば数%〜10%未満の影響に留まります。 「ホテル業界全体が壊滅する」という市場の反応は、あまりに情緒的すぎると言わざるを得ません。


4. 結論:不確実性を買う

市場は常に「最悪のケース」を織り込みに行きますが、私は「構造的な調整の範囲内」という、やや楽観的な(しかしデータに基づいた)シナリオに賭けることにしました。

今の株価水準は、今回の騒動前の「2ヶ月前くらいの価格」まで戻っています。 業績(実体)が変わっていないのに、センチメント(気分)だけで安くなっているなら、それはバーゲンセールです。

もちろん、ここから政治的対立が激化し、本当にビザ停止などの措置が取られれば、私のシナリオは崩壊します。その時は素直に負けを認めましょう。 ただ、「みんなが恐怖で逃げている時こそ、冷静にデータを拾いに行く」という逆張り的な発想こそが、超過リターンを生む唯一の道だと信じています。

さて、このナイフ掴みが吉と出るか凶と出るか。 結果が出るまでの間、少し安く買えたホテルのオーナー気分で覚悟を決め込むことにします。

「効率」の奴隷はもう辞めた。インデックス投資家が、あえて「面倒な日本株」を始める理由。

「効率」の奴隷はもう辞めた。インデックス投資家が、あえて「面倒な日本株」を始める理由。

はじめまして。きりしまと申します。 日本の株式投資と、その裏にある思考プロセスを記録するために、このブログ『思考ノート』を立ち上げました。

現在、私は40代半ば。エンジニアとして働きながら資産形成をしています。 これまでの私の投資スタイルは、極めて退屈で、そして極めて正解に近いものでした。「インデックス(S&P500やオルカン)の積立投資」です。

感情を排し、市場平均を丸ごと買い、あとは寝て待つ。 合理的です。効率的です。そして、資産形成の土台としてはこれ以上の正解はないでしょう。

しかし、40代も半ばを迎えた頃、ふと気づいてしまったのです。 「このまま『市場にお任せ』で思考停止したまま、投資人生を終えていいのか?」と。


「効率」のその先にある欠乏感

インデックス投資は素晴らしいですが、そこには「主体性」がありません。 自分が保有している企業が何をしているのか、経営者がどんな顔をしているのかを知らなくても、資産は勝手に増えていきます。

それは楽ですが、どこか虚しい。 自分が世の中の経済活動に参加しているという「手触り」が欠けているからです。

だから私は、あえて手間のかかる「個別株」という泥沼に足を踏み入れることにしました。

  • なぜその企業なのか?
  • 数字(株価)の裏側にある経営者の哲学は本物か?
  • 現場で働く人たちに「ぬくもり(熱量)」はあるか?

そういった、インデックス投資ではノイズとして切り捨てられる「物語」まで含めて、自分なりに悩み、計算し、ベットする。 そのプロセスを通じて、社会を見る「解像度」を上げること。それが、私がこの非効率な道を選んだ理由です。


このブログは「実験室」である

このブログは、誰かのために書くというよりは、私自身の「実験ログ(日誌)」です。

投資は意思決定の連続です。 「なんとなく良さそうだから買った」「怖くなったから売った」 そんな曖昧な感情で売買していては、いつまで経っても運任せのギャンブラーです。

  • なぜ買ったのか(仮説)
  • なぜ売ったのか(検証)

これを言語化して晒すことで、自分自身への言い訳を封じ、投資判断の精度を研ぎ澄ませていきたいと考えています。

メインテーマ:論理とロマンの交差点

このブログで扱うのは、基本的に「割安(バリュー)でありながら、将来の成長(グロース)も期待できる日本株」です。

5年、10年と長く保有することを前提とした「長期投資」が基本戦略。 冷徹な「数字(電卓)」でスクリーニングし、最後に「想い(ロマン)」で保有を決める。そんなスタイルを目指します。

もちろん、専門家ではありません。見当違いな分析もするでしょうし、派手に負けることもあるでしょう。 そんな試行錯誤のプロセスも含めて、40代の投資家が七転八倒する様子を、リアルタイムのドキュメンタリーとして楽しんでいただければ幸いです。

「主体性」という、今の時代に最もコストパフォーマンスの悪いものをあえて追求していく旅。 今日から始めます。どうぞ、よろしくお願いいたします。


免責事項 本ブログは個人の投資記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。