eBASE(3835):ジリ安を見て思う。バリュー株投資の真の敵は「暴落」ではなく「退屈」と「金欠」
ポートフォリオの片隅で、ここ最近、サイレントに株価を落としている銘柄があります。 食品業界のデータベースで圧倒的シェアを持つ、eBASE(3835)です。
コンプライアンス上のインシデントがあったわけでもありません。それなのに、毎日薄い出来高の中で売りが優勢になり、株価はじわじわと下値を切り下げています。

この値動きをモニターしていても、恐怖でパニック売りが出ているような切迫感は感じられません。 10月の決算で下方修正しているのですが、来年も売上を回復させることができない、さらなるリスク方向の織り込みなのか。これに関しては、売られることに関して機関投資家が少なく個人投資家が多い特性と関係している可能性を想像しています。
外部要因(悪材料)がないとすれば、原因は内部要因(投資家の心理や懐事情)にあると考えるのが自然です。 私がこのチャートから読み取れる仮説はただ一つ。画面の向こうにいる投資家たちは、「退屈」と「金欠」という、相場の構造的な仕様に耐えられなくなっているのではないか、ということです。
1. 「隣の芝生」を買うためのリソースがない
今の相場を見渡せば、AIだ、半導体だと、毎日派手に動く銘柄が溢れています。 私も「今すぐエントリーしたい銘柄リスト」がずらりと並んでいます。信越化学、リクルート、味の素……どれも美しいビジネスモデルを持つ企業です。
しかし、ここで冷徹な現実が立ちはだかります。 「金欠」という、ハードウェアスペックによる制約です。
もし資金が無限にあれば、eBASEを持ったまま、他の銘柄も買い増せばいいだけの話です。 しかし、サラリーマン投資家の入金力には明確な限界があります。 新しいスター銘柄をポートフォリオに組み込むためには、手元の何かを売らなければなりません。
「この動かないeBASEを現金化して、あっちの輝いている株を買いたい」
「あっちのは今買わないともう買えない絶好の好機が来ている」
今、eBASEが売られている背景には、こうした資金移動(乗り換え)のニーズがあるのだと推測します。 その結果、地味なバリュー株は、買い手が不在のまま、しびれを切らした換金売りによって「正当な評価額」よりも遥かに低い位置を這うことになるのでしょう。機関投資家が入ってこられない個人の株主で構成される流動性の低い株であればあるほどこの傾向は強まりそうです。
2. 「動けない」ことは、最強のセキュリティになる
では、無理をしてでも資金を捻出し、銘柄数を増やして分散すべきでしょうか? ここで、ウォーレン・バフェットを思い出します。
「株式市場とは、活動的な人から、忍耐強い人へ、お金が移動する場所である」
バフェットは、頻繁に売買すること(活動的であること)を戒め、じっと待つことの重要性を説いています。
「金欠だから、動けない」。 これは一見ネガティブですが、「無駄な操作を強制的にロックする」という、極めて強力な安全装置が働いているとも言えます。
現在、私のポートフォリオはJ-REITを含めて8銘柄ほど。 兼業投資家が詳細まで決算を追いかけられるのは、せいぜい10銘柄程度が限界です。 「金欠で買えない」という制約は、ポートフォリオを無秩序に広げず、「本当に自信のある銘柄を厳選し続ける」ためのフィルターとして機能しているのです。
3. 「退屈」はバグではなく、仕様である
結局のところ、今の私たちにできることは、この状況を「そういうハードウェアスペック」として割り切ることだけです。
欲しい株はあるが、金欠で買えない。 手持ちの株は地味だが、売る理由(業績悪化)もない。 だから、動かない。
この「アイドリング時間」は、投資家にとって最も苦しい時間の一つです。 しかし、バフェットでさえ、何年も株を買わずに現金を積み上げ、じっと好機を待つ時期がありました。
「今は、バックグラウンドで時間を味方につける時期なのだ」
そう定義して、画面を閉じます。 ジリジリ下がる株価というノイズに一喜一憂せず、「金欠だからこそ、余計なエラーを起こさずに済んでいる」と前向きに捉えるしかありません。
退屈と歓喜の「コントラスト」を楽しむ
おそらく、次の決算発表という大きな「答え合わせ」の日が来るまで、株価は何も語らないでしょう。 この沈黙の期間は、確かに辛抱を要します。
しかし、もし相場が毎日上昇し続け、苦痛なく利益(ドーパミン)だけが得られるゲームだとしたら、それは本当に面白いのでしょうか? ずっと甘いだけのケーキがすぐに飽きられるように、「退屈な停滞期」と「正当に評価される瞬間」のミクスチャー(混合)があってこそ、投資の喜びは最大化されるはずです。というもっともらしいコトを自問して更に気を紛らわせます。
これは、投資家として次に進むために、どうしても通らなければならない「正規のルート」なのですから。


