「計算不能な領域」を覗き見る。AIがもたらす富の拡大と、FOMO投資家の迷い。

「計算不能な領域」を覗き見る。AIがもたらす富の拡大と、FOMO投資家の迷い。

投資家の机の上には今、2つの全く異なる書類の山が置かれています。

私のポートフォリオの机の天板には、S&P500やオルカンといったインデックスファンドが使われています。これで市場平均点は確保できている。負けないための「守り」は固めています。サテライト枠と言いつつ、更にREITがまだ半分以上あります。

そのまた残りの数百万の資金、いわゆる「サテライト枠」をどう動かすか。 ここを考えた時、今時点進めている従来の「線形(リニア)なバリュー株」だけで固めていて良いのか、という迷いが生まれています。

AIがもたらす「富の爆発的な拡張」。 この波に乗れないことは、相対的に「負け」を意味するのではないか。そんな焦燥感と、投資家としての規律の間で揺れている、現在の心境を整理してみます。

「計算できる安心」の限界(線形の世界)

左側の山にあるのは、半導体製造装置メーカーや、堅実なインフラ企業のレポートです。

  • 特徴
    • 「工場を建てれば生産が15%増える」「原材料費が上がれば利益が削れる」。すべては物理法則と因果関係の中にあり、計算機を叩けば「適正株価」が見えてきます。
  • ジレンマ
    • 安心感はあります。しかし、これは「100を110にする作業」。 AIが社会全体の生産性を劇的に押し上げ、富の総量を増やしている時、ここに留まっているだけでは、その恩恵を十分に取り込めないのではないか。 「堅実だが、構造的に劣後していくのではないか」という不安が拭えません。

「隣の芝は青い」のか、それとも「パラダイムシフト」なのか

右側の山にあるのは、AIで産業構造を変えようとする企業のレポートです。

  • 特徴
    • 従来の物差し(PER)が通用しません。「もしAIが事務作業の30%を代替したら?」という仮定の話であり、DCFモデルの前提を少し変えるだけで理論株価が激変します。
  • 葛藤
    • 正直、今の株価を見るとめまいがします。これを追いかけるのは、単に「隣の芝が青く見えているだけなのではないか? 急騰する銘柄を見て、自分の持っている地味なバリュー株がつまらなく見えているだけではないか。そう自問自答することもあります。これは投資家として、非常に悩ましい問題です。

ただ、一つ言えるのは、現状のポートフォリオが「確率(Probability)」の高いリニアな成長を目指す銘柄に投資が集中している実態です。

むしろ、計算できる安心感は、むしろ緩やかなジリ貧ではないのか…。 個人投資家の限られた資産(サテライト枠)で狙うなら、計算はできないが当たれば世界が変わる「計算不能なかつ可能性にとどまる領域」。だからこそ、AIや半導体はPERが異常なレベルにまで買い進まれていくのだと思う。FOMO(フォーモ)は「Fear of Missing Out(取り残されることへの恐れ)」は非常につい強い。

限られた資産を「ボトルネック」に注ぐ視点

もし、この「計算不能な領域」に足を踏み入れるなら、闇雲に買うのではなく、メリハリが必要です。 私が今、「ここなら構造的に面白いかもしれない」と監視リストに入れているのは、「社会構造が変わる時、どうしても避けて通れない場所(ボトルネック)」になり得る企業です。

具体的に白状しますと、以下の3社あたりを見始めていますが、この程度の仮説ならたくさん織り込まれているに違いなく、PERを見ていると目眩がします。

Appier Group (4180)

AIの本質は「予測」によるコストゼロ化です。Appierは「誰がいつ何を買うか」を予知し、企業にとって浪費だった広告費を、確実なリターンを生む投資へと変えています。 単なるツールベンダーではなく、企業のROI(投資対効果)という「経営の急所」を握っている点が強みです。もし予測精度が極まれば、顧客はここから離れられなくなる可能性。

PKSHA Technology (3993)

ソフトベンダに見えますが、やっていることはコールセンター、クレカ不正検知、駐車場管理といった、社会のあらゆる「判断コスト」をAIのアルゴリズムへの置換しています。 派手さはありませんが、「知能のユーティリティ(インフラ)」として、電気やガスのように社会の裏側に染み渡ろうとしています。一度入り込めばスイッチングコストが高い、堅牢なポジションになる可能性。

さくらインターネット (3778)

AIが進化すればするほど、その裏側で膨大な計算資源(GPUサーバー)が必要になります。これを米国のテック企業だけに依存するのは、国の安全保障上リスクがあります。 さくらは、日本独自のAI計算基盤を担う存在として、政府からの強力な支援を受けてデータセンターを拡張出来る企業。AI時代の「デジタルの土地(インフラ)」を物理的に押さえようとしている点が、物理レイヤでのボトルネックになる可能性。

ベンチャーキャピタリストの眼差しを持つ覚悟

いやいや、すべて可能性の話ではないか。

DCF分析がワークしない。結局のところ、今の相場で「指数関数的なリターン」を狙うということは、上場株市場にいながらにして、ベンチャーキャピタル(VC)のゲームに参加させられているということに極めて近い場所にいる。

  • VCの論理
    • 「9社が失敗しても、1社がホームランを打てばいい」。これは分散と確率のゲームであり、個別のDCF分析の積み上げではありません。
  • 公開市場の矛盾
    • しかし我々は、毎日値動きするチャートを見せられ、四半期ごとの決算で「進捗」を確認しようとしてしまう。非線形な成長をする生き物を、線形な定規で測ろうとするから苦しいのです。

迷いながらも、見え始めた景色

これらの銘柄が、今の株価で正当化できるか? 正直、従来のスプレッドシートで計算すれば「No」や「判断不能」が出ます。何度も言ってすいません。

個人投資家のサテライトの投資金額でこんなことやっていいのか?これが正しい選択なのか、それとも一時の熱狂に流されているだけなのか、まだ確信はありません。 しかし、インデックスで守りを固めているからこそ、一部の資金でこの「計算不能な可能性」を探ってみるのも悪くない選択肢だと思い始めています。

「AIがもたらす富の拡張に取り残されたくない」 そんな素直な欲望とリスク管理の狭間で、今はこうした銘柄を静かに追いかけています。何度でも自分に問う。

これはFOMOか…?それとも投資判断の一環か…?まあ、いずれにしても普通に強欲よな

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