【告白】ロマンを語る私の、冷たい裏の顔。「投資家」と「ファンドマネージャー」の二重生活について。
優待シーズンの足音が近づくと、SNSのタイムラインが少し騒がしくなります。「クロス取引」や「タダ取り」の在庫確保報告。
普段、「企業のぬくもり」だの「応援」だのとポエムのようなことを書いている私ですから、読者の皆様はこう思っているでしょう。 「きりしまは、そんなリスクを取らないセコい取引なんて見向きもしないはずだ。『クリープのないコーヒーのようなものだ(古い?)』と笑い飛ばすに違いない」と。
……えっと、正直に告白します。 やります。結構、冷徹にやります。
今日は、私が抱える「ロマン」と「そろばん」。この一見矛盾する二つの顔と、自分の中でどう折り合いをつけているかについて、正直に書いてみようと思います。
1. 脳内に住む「二人のきりしま」
私の中には、性格の絶望的に合わない二人の人間が同居しています。
一人目は、このブログの著者である「投資家きりしま」。 彼はロマンチストです。「リスクを背負ってこそ、果実は甘くなる」「企業ストーリーへの共感こそが投資の本質だ」と熱く語ります。彼にとって、リスクゼロで利益をかすめ取るクロス取引は、魂の抜けた行為であり、美学に反します。
しかし、もう一人。私の資産全体を管理する、冷血な「ファンドマネージャーきりしま」がいます。 彼が見ているのは、物語ではなく「ポートフォリオ全体の効率性(シャープレシオ)」だけです。
彼が、待機資金(キャッシュ)を見てこう囁くのです。 「おい、次の暴落を待っているその現金、ただ眠らせておくつもりか?」 「そこに『年利換算数%のリターン』が確定している取引が落ちているぞ。なぜ拾わない?」 「それを『美学』とか言ってスルーするのは、マネージャーとしてのただの『職務放棄』ではないか?」
……ぐうの音も出ません。 数字(ロジック)の世界において、落ちているお金を拾わない正当な理由は存在しないからです。
2. 優待クロスは「投資」ではなく「事務処理」
そこで私は、精神衛生を保つために、自分の中で明確な線引きを行いました。
- 個別株の現物買い = 心を揺さぶる「投資」。
- 優待クロス取引 = 銀行の金利計算に近い「事務処理」。
私はクロス取引をする際、その企業の統合報告書を読み込んだりしません。 ただ淡々とカレンダーを確認し、Excelで在庫を管理し、機械的に注文を入れる。
これは私にとって、スーパーでポイントカードを提示する行為や、定期預金の満期手続きをするのと同じカテゴリ。いわば「高配当なポイ活」なのです。
そこに「主体的な応援」という熱はありません。あるのは「資金効率を最大化する」という、ファンドマネージャーとしての冷たい実務能力だけ。 そう割り切ることで、私はロマンとそろばんを共存させています。
3. 「我が家の株」にするための、愛ある合理性
一方で、私が本気で応援してリスクを取る「現物保有」の場合。 ここでも、私の内なる「ファンドマネージャー」は合理性を発揮します。
それは、「家族名義への分散」です。
例えば、ある企業の株を200株買いたいと思った時。私一人で200株持つか、妻と100株ずつ持つか。 私は迷わず後者(家族分散)を選びます。
なぜなら、「同じリスク量(200株分の変動リスク)」を負っているのに、リターン(優待品)を取りこぼすのは、プロとして非合理的だからです。 100株優待が一番効率が良いなら、手間を惜しまず家族で分ける。これはセコいのではなく、リスクマネーを投じる者の「義務」です。
そして何より、これには数字以上の効用があります。 妻や子供の口座にその株が入ることで、その企業は「お父さんが勝手にやっている株」から、「私たち家族の株(アセット)」へと進化するのです。
「ねえ、私の口座にあるあの会社、新しいお店出したんだって?」 「今年のカタログギフト、二人分合わせて、ちょっと良いお肉頼んじゃおうか」
そんな会話が食卓で生まれること。 投資という孤独な営みが、家族の共通体験になり、生活の中に溶け込んでいくこと。
これこそが、私が求めている「生活に根ざした投資」の完成形であり、「我が家の株」と呼べる最強の状態だと思うのです。
4. 結論:冷たいマネージャーが、熱い投資家を守る
「口座管理なんて面倒くさいことを」と思われるかもしれません。 ですが、この「事務処理(ポイ活)」や「家族口座の管理」といった冷徹なバックオフィス業務をサボらないことこそが、実は私の投資家としての寿命を延ばしています。
ファンドマネージャーとして冷ややかに積み上げた「小銭」や「生活必需品(優待)」が、家計の防波堤になる。 その安心感があるからこそ、本命の銘柄が暴落した時に、「まあ、生活は何とかなる」と腹を括って、ロマンある企業を買い向かうことができるのです。
右手に「冷たいエクセル(ファンドマネージャー)」を。 左手に「温かいストーリー(投資家)」を。
この二つの顔を使いこなしてこそ、40代の個人投資家は市場という荒波を生き残っていける。
……まあ、そうやって「事務的に」手に入れたハンバーグも、家族みんなで食べれば「やっぱり美味しいね!」って感動しちゃうんですけどね。 そこはやっぱり、所詮人間ですから。