【銘柄診断】セブン&アイ (3382) が2,200円突破。Pythonで「市場の期待値」を逆算してデバッグする。

【銘柄診断】セブン&アイ (3382) が2,200円突破。Pythonで「市場の期待値」を逆算してデバッグする。

ポートフォリオの一角を占める セブン&アイ・ホールディングス (3382)。 今年秋の底値圏の1,900円あたりから、気づけば 2,262円 を超えてきました。半導体への投資が一段落したあとのセクターローテーションで大型株割安に資金が向かいやすく、セブン&アイの構造改革が評価されている構図です。

保有比率はそこまで大きくありませんが、私のポートフォリオの中では現在 「最もイグジット(利益確定)に近い銘柄」 です。 だからこそ、感情で売るのではなく、エンジニアらしく「コード」と「数式」で価値を測って判断する必要があります。

今回は、Pythonを使って現在の株価が織り込んでいる「成長率」を逆算し、さらに「もし他社並みの評価(成長率3.5%)を得られたら株価はどこまでいくのか?」をシミュレーションすることで、具体的な売り時(ターゲット)をデバッグ(検証)していきます。

1. 現状分析:日米の「月次データ」に見る明暗

まずは、足元のファンダメンタルズを最新の月次営業情報(11月度)から確認します。

🇯🇵 日本(セブン-イレブン・ジャパン):復調の兆し

  • 既存店売上: 前年同月比 102.7%
  • 内訳: 客数は 99.6% とまだ前年割れですが、客単価が上昇しており、売上を押し上げています。

国内は「稼ぐ力」を取り戻しつつあります。商品力強化や高付加価値化の施策が、数字(コード)として表れ始めているのはポジティブな材料です。

🇺🇸 米国(7-Eleven, Inc.):不調継続

  • ドルベース既存店商品売上: 前年同月比 97.1%
  • トレンド: 10月(99.5%)からさらに悪化しており、依然として前年割れが続いています。

現地のインフレ疲れによる消費減速が響いており、ここの底打ちが見えない限り、手放しで「買い」とは言えない状況です。

2. Pythonで解析:市場は何を織り込んでいるのか?

次に、現在の株価 2,262円 が、どのような期待値(成長率)で形成されているのかを逆算します。 今回は、「割引現在価値(DCF)」の定率成長モデルを変形し、市場が期待している「永久成長率 (g)」を算出します。やりたい計算をちゃんとやるにはやはりPython先生の登場です。

計算ロジック

通常、理論株価は以下の式で求められます。

Price = EPS / (r – g)

これを g(成長率)について解くと、以下のようになります。

g = r – (EPS / Price)

  • Price:現在の株価
  • EPS:一株当たり純利益
  • r(割引率):小売業のリスクを考慮し 7.0% と仮定
  • g(成長率):市場が織り込んでいる期待成長率

※株価の指標ってこうやって変形して使ってもいいんだよね‥.?

実装コード(Python)

Python

def calculate_implied_growth(price, eps, discount_rate=0.07):
    """
    株価とEPSから、市場が織り込んでいる「期待成長率(g)」を逆算する関数
    Formula: g = r - (EPS / Price)
    """
    if price <= 0: return 0
    return discount_rate - (eps / price)

def calculate_theoretical_price(growth_rate, eps, discount_rate=0.07):
    """
    想定成長率(g)から「理論株価」を算出する関数
    Formula: Price = EPS / (r - g)
    """
    if discount_rate <= growth_rate: return float('inf')
    return eps / (discount_rate - growth_rate)

# --- データ入力 (2025/12時点) ---
discount_rate = 0.07  # 割引率 7.0%

# セブン&アイ (3382)
seven_i_price = 2262.5
seven_i_eps = 107.66

# イオン (8267)
aeon_price = 2456
aeon_eps = 15.1  # 会社予想

# PPIH (7532) ※ドン・キホーテ
ppih_price = 946.2
ppih_eps = 35.3  # 会社予想

# --- 計算実行 1:現状の市場期待値(g)を逆算 ---
g_seven = calculate_implied_growth(seven_i_price, seven_i_eps, discount_rate)
g_aeon = calculate_implied_growth(aeon_price, aeon_eps, discount_rate)
g_ppih = calculate_implied_growth(ppih_price, ppih_eps, discount_rate)

# --- 計算実行 2:成長率3.5%(ドンキ並み)になった場合の理論株価 ---
target_growth = 0.035 # 3.5%
target_price_seven = calculate_theoretical_price(target_growth, seven_i_eps, discount_rate)

print(f"--- 1. Implied Growth Rates (Discount Rate = 7.0%) ---")
print(f"Seven & i (3382): Price={seven_i_price} => Implied Growth = {g_seven:.2%}")
print(f"Aeon (8267):      Price={aeon_price}    => Implied Growth = {g_aeon:.2%}")
print(f"PPIH (7532):      Price={ppih_price}    => Implied Growth = {g_ppih:.2%}")
print(f"\n--- 2. Target Price Simulation ---")
print(f"If Seven & i Growth -> {target_growth:.1%} : Target Price = {target_price_seven:.0f} JPY")

出力結果と考察

上記のコードを実行した結果がこちらです。

--- 1. Implied Growth Rates (Discount Rate = 7.0%) ---
Seven & i (3382): Price=2262.5 => Implied Growth = 2.24%
Aeon (8267):      Price=2456    => Implied Growth = 6.39%
PPIH (7532):      Price=946.2   => Implied Growth = 3.27%

--- 2. Target Price Simulation ---
If Seven & i Growth -> 3.5% : Target Price = 3076 JPY

① 現状の評価は「低い」

イオンが 6.39%、ドン・キホーテ(PPIH)が 3.27% の成長を織り込んでいるのに対し、セブン&アイへの期待値はわずか 2.24%。 市場はまだ、セブン&アイの構造改革を「半信半疑」で見ています。

② 成長率3.5%なら、株価は「3,000円」を超える

ここが今回の最も重要な発見です。 もし構造改革が成功し、市場からの評価がドン・キホーテ並みの 「成長率 3.5%」 まで改善したと仮定すると、理論株価は 3,076円 となります。 現在の株価から約36%の上昇余地(アップサイド)があることになります。

「世界最強のコンビニ」になろうとしている企業が、ドンキ並みの成長率(3.5%)を目指すというのは、決して無理な仮定ではありません。

3. 今後の見通し:2月末の「イグジット」を視野に

データ分析の結果、明確な投資判断基準(ターゲット)が見えてきました。

  1. 第一弾の判断ポイント:株価 3,000円 現在の株価(2,262.5円)は「割高ではない」ですが、私たちの目指すターゲットはもっと上です。 シミュレーションの通り、市場評価が正常化(成長率3.5%織り込み)すれば、株価は 3,000円 に到達してもおかしくありません。 「3,000円」 という数字が、第一弾の明確な到達目標になります。
  2. 2月末の「権利確定」 これから1月、2月と株価が上がり続ければ、2月末の「株主優待の権利確定」に向けて相場が過熱する可能性があります。 もしそのタイミングで株価がターゲット(3,000円近辺)に近づくようなら、そこは絶好の「確定イグジット(利益確定)」のシーズンになる可能性が出てきました。

あと2ヶ月でファンダがでたり決算の雰囲気感が出てくると思いますが、計算上の成長率期待が3.5%に近づく(株価3,000円が見えてくる)局面になったら、冷静に利益を確定させます。

これは公開記事を使った自分への戒めというのが大きいです。自分ごときの意志で利確を判断なんてできないと思えるので。

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