インデックス全盛時代に、個別株に求める「PER拡大」の条件。eBASE(3835)のEPSの熱狂と「2nd」の冷静。

インデックス全盛時代に、個別株に求める「PER拡大」の条件。eBASE(3835)のEPSの熱狂と「2nd」の冷静。

S&P500やオルカン(全世界株式)が最高値を更新し続ける中、私のポートフォリオを見渡すと、ふと冷静になる瞬間があります。 「リスクを取って個別株を選んでいるのに、パフォーマンスがインデックスに負けていないか?」

先日、ある著名投資家のYouTube配信を見て、そのモヤモヤの正体が言語化されました。 「株価を爆発させるには、EPS(利益)の成長だけでなく、PER(期待値)の拡大がイメージできる銘柄で勝負すべきだ」

EPSが伸びても、PERが切り下がる(人気がなくなる)と株価は上がりません。 逆に、EPS成長に加え、PERが20倍から30倍へとリレイティングされる銘柄こそが、インデックスを凌駕するアルファを生み出します。

私はこれまで「割安でEPSが伸びていればいい」と思っていましたが、これだけ強いインデックスという選択肢がある以上、「個別株選定のアルゴリズム(条件)」をアップデートする必要があると痛感しました。

今回は、私の保有株であるeBASE(3835)をケーススタディとして、なぜPERが拡大しないのか、そのボトルネックと投資家としての距離感を検証します。

eBASEの現在地:「PER 20倍の壁」の正体

eBASEのEPS(利益)は順調に伸びていますが、PER(期待値)は20倍前後で頭打ちとなり、株価はここ数年、重い展開が続いています。

なぜPERが30倍、40倍へと切り上がらないのか? その答えは、会社が掲げる成長戦略「eBASE 2nd」の収益貢献が見通せないことにあると考えています。

eBASEの事業は大きく2階層に分かれます。

  • 1st(現状): 商品データベース販売。圧倒的シェアで安定収益。
  • 2nd(未来): データベースを活用したアプリ展開。エンドユーザーへの価値提供。

市場がeBASEに「高成長株」の評価を与えるには、この「2nd」の成功が不可欠です。

「e食住シリーズ」のマネタイズという課題

具体的に見ると、Secondの中核を担うの「e食住シリーズ」と呼ばれるアプリ群です。 (食品情報の検索や、住設機器のシミュレーションなど)

会社側の説明資料や質疑応答を読み解くと、現状の課題が浮き彫りになります。

「POC(実証実験)までは行くんだけど、そこからの本格的なマネタイズ(収益化)が見えてこない」

大手小売やメーカーとの実証実験は進んでいます。アプリストアでDLもできます。しかしながら、それが「月額課金」や「トランザクション収益」として爆発的に伸びるフェーズに入っていません。 「便利なアプリだね」で終わってしまい、「なくてはならないインフラ」として課金されるまでの壁を超えられていないのです。20分ぐらいから紹介動画があります。

これが、株価の「ブロックポイント(抵抗帯)」です。 「データベースとしては超一流だが、BtoCプラットフォーマーとしては未知数」。 市場からこの評価が変わらない限り、PER 20倍の壁は越えられません。

「実質連続増配株」としての生存戦略

では、eBASEは「売り」なのか? PER 20倍を維持してEPSが成長するのことで保有する理由を求めることは可能と考えています。

「2ndがブレイクしなくても、1st(データベース事業)が盤石なのだから、高配当な『実質的な連続増配株』として持っておけばいい」

ただ、1点、時間軸を犠牲にすることが出来るならばとう枕詞はつきますが。 もし2ndが失敗しても、eBASEはキャッシュリッチで、自社株買いや増配に積極的です。 「2ndの成功」というアップサイド・オプション(宝くじ)を握りしめたまま、待っている間は配当(インカム)で報われる。 この「リスクヘッジの効いた待ち伏せ投資」としては、今の株価水準は十分に魅力的です。

人間的な判断:最後に信じるのは「空気」

ここまでが、ロジックの世界です。 しかし、私がeBASEを売らない理由は、これだけではありません。

私が最後に頼りにしているのは、決算書の数字でも、PERの倍率でもなく、「経営陣から感じる『空気』」としか言いようがありません。

決算説明会の動画や、質疑応答の文面。 そこには、数字には表れない「経営者の誠実さ」や「現場の熱量」、あるいは「今は苦しんでいるが、決して諦めていない執念」のようなものが滲み出ています。

  • 「上手くいっていないことを、隠さずに正直に話しているか?」
  • 「株主に対して、真摯に向き合っているか?」

こういった行間にある「温度感」や「空気」を嗅ぎ分けられるのは、今のところAIではなく、私たち人間だけの特権なんじゃないか。

私は、eBASEという会社に漂う「真面目で実直な空気」を信じています。 今は「2nd」の壁に跳ね返されていますが、この人たちなら、泥臭く試行錯誤を続けて、いつか穴を空けるのではないか。 そう信じたい自分が、確かにそこにいるのです。

期待値の解像度を上げる

「EPS成長 × PER拡大」。 このダブルエンジンが点火する銘柄を見つけるのは簡単ではありません。 しかし、eBASEの「2ndの壁」を直視したことで、「何がPERの上値を抑えているのか」を分析する視点は養われました。

インデックス全盛時代において、個別株を持つなら「なぜそれを持つのか」という問いから逃げることはできません。よりシビアに「PER拡大のトリガー」という観点でも探求していきたいと思います。

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【参考動画】 今回の考察のきっかけとなった、PERと成長に関する解説動画はこちらです。非常に本質的な内容でした。

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