【読書録】『超配当』株投資から学ぶ、インカム派とキャピタル派の「最適解」。なぜ投資に「コピペ」は通用しないのか

【読書録】『超配当』株投資から学ぶ、インカム派とキャピタル派の「最適解」。なぜ投資に「コピペ」は通用しないのか

王道の裏にある「構造的な違い」

先日、ベストセラーとなっている『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』を読みました。

「暴落時、株価が本来の価値よりも下がった時に冷静に仕込む」 「人気化し、割高になった銘柄には手を出さない」

著者の語るアプローチは、私が(僭越ながら…)実践している「割安成長株投資」と驚くほど似ており、基本に忠実な王道のバリュー投資です。 しかし、読み進める中で、ある種の違和感というか、「手法は似ているが、その裏側にある『前提条件』が決定的に違う」という事実にハッとさせられました。

私は「割安成長株」を選好する投資家ですが、著者が狙うのは「連続増配株」。 具体的な銘柄への評価プロセスを追体験することで、「同じ『割安で買う』という行為でも、目指すゴール(仕様)が違えば、これほど評価軸が変わるのか」という違いが鮮明になり、株式投資に対する解像度が一段上がった感覚がありました。

今回は、この本を通じて再確認できた「配当派(インカム)」と「成長派(キャピタル)」の違い、そして「万人に共通する正解はない」という事実についてまとめます。


1. 共通点:「安くなるまで待つ」という規律

まず、著者と私(割安株投資家)の間で完全に一致しているルールがあります。それは「逆張り」の思想です。

  • 著者のスタンス: 配当利回りが歴史的な高水準になるまで(株価が下がるまで)待つ。
  • 私のスタンス: PERやDCF法で算出した理論株価を下回るまで(株価が下がるまで)待つ。

どちらも、市場が悲観的なエラーを起こしている時に買い向かうスタイルです。 「高値掴みを避ける」「安全域(Margin of Safety)を確保する」というリスク管理の思想は、流派を超えた投資における普遍的な真理(コア・ロジック)だと言えるでしょう。


2. 相違点:「利益確定」のタイミングをどう設計するか

しかし、「何を『良し』とするか」の基準において、私と著者ではシステム設計が分かれます。

配当派のレンズ(本書の視点)

著者が重視するのは、「累進配当(減配しないこと)」と「高い利回り」です。 これは、企業が得た利益を、定期的に「現金」として投資家へアウトプットすることを重視する戦略です。 だからこそ、三菱商事や三井住友FGのような、成熟した「還元重視」の企業がポートフォリオの主役になります。キャッシュフローが可視化されるため、生活の質(QOL)に直結しやすい設計です。

成長派のレンズ(私の視点)

一方、私が重視するのは「再投資による複利効果」です。 配当として外部に出すくらいなら、その現金を事業へ再投資し、企業価値そのものを雪だるま式に増やしてほしいと考えます。

  • リクルート (6098): 配当は少ないが、Indeedなどの事業へ再投資し、年率15%以上で成長機能を強化している。
  • 信越化学 (4063): 巨額の工場投資をキャッシュで即断する「攻め」の姿勢を持っている。

私にとっての「良い銘柄」とは、今の配当が高い銘柄ではなく、「私(投資家)が運用するよりも、経営者が再投資した方が高いパフォーマンスを出せる銘柄」なのです。

雪だるまを作る時、途中で雪を削り取る(配当)か、削らずに転がし続ける(再投資)か。


自分だけの「変数」を定義するしかない

この本は、資産形成のゴールを「配当生活」に見据えた場合、非常に再現性の高い優れた設計です。

理論上だけで言えば、配当を受け取るたびに税金(約20%)が発生するため、複利効率は落ちます。しかし、人間は理論だけで生きているわけではありません。 「今使えるお金が増える」という安心感や、それを消費に回す喜びは、数字には表れない重要なメリットです。この「心理的な効用」を優先し、あえて税金を払ってでも確定利益を受け取ることは、合理的な選択の一つです。

  • 配当派: 税コストを払ってでも、現在のキャッシュフローと安心感を得る。
  • 成長派: 現在の楽しみを先送りし、税の繰り延べ効果による資産最大化を目指す。

結局のところ、どちらが優れているかという単純な比較ではなく、「自分は何を優先したいのか(どのパラメータを重視するか)」というトレードオフの問題に行き着きます。おすすめにでてくる銘柄コードをコピペするだけで解決するものではない。

そう考えると、万人に共通する「おすすめ銘柄」など存在しません。 私たちは、他人の成功事例を参考にしつつも、最終的には自分の人生設計に合わせて自分で判断するという、「思考するプロセス」からは逃れられないのだと、改めて痛感しました。

私も最適解を探す旅を、これからも淡々と続けていきたいと思います。


【紹介した書籍】 『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資 日経平均リターンを3.86%上回った“割安買い”の極意』 (長期株式投資・著 / KADOKAWA)

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