J-REITの出口戦略。私が「まだ売らない」と決めた、単純すぎる2つの根拠

J-REITの出口戦略。私が「まだ売らない」と決めた、単純すぎる2つの根拠

ポートフォリオの6割が「不動産(J-REIT)」で埋まっている現状は、正直に言えば居心地が悪いものです。

前回の記事でも触れましたが、私の本音としては、とっととこの偏りを是正し、次の資金循環——テック株や素材産業——へ駒を進めたい。エンジニアとしての本能が、これからの技術革新へベットしろと囁くからです。

しかし、市場は私の「飽き」や「焦り」とは無関係に動きます。

感情で売買ボタンを押すのは、投資ではなくただの消費です。規律ある投資家でありたいなら、売却のトリガーは常に冷徹な数値で引かねばなりません。

では、どの数値を見るか。

私はプロのファンドマネージャーではありません。個別のオフィスビルの空室率や、テナントの契約更改の機微まで読み解くのは、私の「能力の輪」の外側にある行為です。それを無理してやろうとすると、解像度の低い情報を信じ込む「知ったかぶり」のリスクを負うことになる。

だから私は、あえて変数を絞ります。

私がJ-REITの売り時を判断するために監視しているのは、誰もが確認できる、けれど多くの人が軽視しがちな「2つの指標」だけです。


私が設定している「撤退の閾値」

複雑なモデルを組めない私が、唯一の規律として定点観測しているのが以下の2点です。教科書的な定義よりも、私の「生活実感」としての解釈を添えておきます。

1. イールドスプレッド(利回り差)

計算式: J-REIT分配金利回り - 10年国債利回り

要は「リスクを取る対価として、国債よりどれだけ多く貰えるか」という指標です。

REITは価格変動リスクがある商品です。元本保証の国債と利回りが変わらないなら、わざわざREITを持つ合理性はありません。この差(スプレッド)が縮小するということは、私の感覚で言えば「夜ぐっすり眠るためのコスト」が払われていない状態です。

【私の規律】

  • 3.0%以上: リスクに対する「手当」は十分。保有継続。
  • 2.5%以下: リスクに見合わない。割高と判断し、機械的に売却検討。

2. NAV倍率(純資産倍率)

計算式: 株価 ÷ 1口当たり純資産額

保有している不動産を今すぐ売り払って借金を返した時、手元に残る現金(解散価値)に対して、今の株価が何倍かを示す数字です。

スーパーで1,000円の肉が900円で売られていれば「買い」だし、1,200円なら「プレミアムがついている」と判断する。それだけの話です。

【私の規律】

  • 1.0倍割れ: 明確なバーゲン(不動産価値以下)。売る理由なし。
  • 1.0倍〜1.1倍: フェアバリュー(適正)。
  • 1.1倍以上: 加熱気味。人気投票の様相を呈しているので警戒。

実践判定:今、ボタンを押すべきか

では、2025年11月の数値を、私の主力2銘柄に当てはめてみましょう。「売りたい」という私の感情を、数字はどうジャッジするか。

① 【インデックス】NF J-REIT(1343)

市場全体(東証REIT指数)の平均値です。

指標現在の数値(概算)私の判定
分配金利回り4.25%
10年国債利回り1.10%
イールドスプレッド3.15%保有継続(2.5%までのマージンあり)
NAV倍率0.93倍保有継続(解散価値割れ)

【結論】

全く売る段階にありません。

スプレッドは3.15%もあり、NAV倍率はまさかの1倍割れ。市場は不動産の価値を過小評価しています。これを売るというのは、1,000円札が入った財布を930円で他人に譲るようなものです。退屈ですが、ホールド一択です。

② 【個別株】ジャパン・ホテル・リート(8985)

インバウンド需要で話題のホテル特化型です。こちらは感情的には「そろそろ利益確定したい」という誘惑に駆られやすい銘柄です。

指標現在の数値(概算)私の判定
分配金利回り4.60%
イールドスプレッド3.50%保有継続(十分なリスクプレミアム)
NAV倍率1.02倍保有継続(加熱感なし)

【結論】

こちらも、数字は「NO」と言っています。

NAV倍率は1.02倍。インデックスよりは評価されていますが、ホテル系REITは好況時にプレミアム(NAV 1.1〜1.3倍)が乗るのが常です。今のインバウンドの活況を考えれば、1.02倍はまだ「平熱」の範囲内。

何より、国債に対して3.5%もの上乗せ金利が得られている現状で手放すのは、投資効率の観点から見て悪手です。


思考の整理

複雑なことを考えようとせず、この2つの定規だけを当てた結果、結論は明白でした。

「まだ、席を立つ時間ではない」

市場全体(NF J-REIT)はバーゲン状態であり、個別株(ジャパン・ホテル・リート)にも熱狂ごとき過熱感はありません。「とてつもないチャンス」ではありませんが、少なくとも今売れば、それは「論理」ではなく「気まぐれ」による売買になってしまいます。

私はテック株へ行きたい。新しいセクターへ資金を移したい。

けれど、私の定めた規律が「待て」と言っている以上、それに従うのがエンジニアであり投資家としての私です。

スプレッドが2.5%を切るか、NAVが不合理なほど高騰するその時まで、配当という名の「待ち賃」を受け取りながら、もう少しこの退屈な不動産ポジションと付き合うことにします。

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