2026年の最適解。『アート・オブ・スペンディングマネー』、BSが無視する「感情」という変数。

2026年の最適解。『アート・オブ・スペンディングマネー』、BSが無視する「感情」という変数。

年末年始、ひたすら活字の海に潜っていました。

そんな中で出会った一冊が、あまりにも当ブログのテーマ(論理とロマン)と共鳴し、付箋だらけになってしまったので、今年の1本目の記事として共有させてください。

モーガン・ハウセルの新著『アート・オブ・スペンディングマネー:一度の人生でお金をどう使うべきか』です。

「めちゃくちゃいい本」でした。 もし「この本の最大の学びは何か?」と聞かれたら、私は迷わず「頭と心の交差点」の話を挙げます。

最大の決断は「頭と心の交差点」で生まれる

特にエンジニア思考の投資家に刺さるのが、第17章「バランスシートは感情を気にしない」というパートです。

ハウセル氏はこう指摘します。

「理性的な計算と、感情的な喜び。この両方を追求することこそが、人生のスイートスポットになる」

これはまさに、このブログで繰り返し検証してきた「論理(数字)とロマン(感情)」の両立と完全に一致します。 数字(BS)では評価できない「精神的なアルファ(心地よさ)」こそが、実は人生における一番いい買い物なのかもしれない。この確信が得られただけで、本書を読んだ価値がありました。

ただ、この本には他にも「刺さる」ポイントが山のようにあります。 全てを詳細に書くと長くなりすぎるので、特に私の投資家としての「自己分析」に繋がった点を、備忘録として箇条書きでまとめておきます。


【備忘録】投資家の「バグ」を修正する重要な気づき

本書を読んでいて、冷や汗をかいたり、深く頷いたりしたポイントです。自分の脳内システムの仕様書を書き換えるつもりでメモを残します。

1. ドーパミンは「期待」で分泌される(無限ループの正体)

「欲しいと思っている時が一番楽しい」――これは感覚的に知っていましたが、脳科学的にも正解でした。 ドーパミンは何かを得た時ではなく、「新しい何かを得られそうだ」という予感(期待)に対して放出される。だから、手に入れた瞬間にその快楽は消滅し、また次の「欲しい」を探しに行く。

これが、我々が陥る「欲の無限ループ(ヘドニック・トレッドミル)」の正体です。 「一度手にしてしまえば、何でもない」というバグを理解しておかないと、永遠に満たされないゲームをプレイさせられることになります。

2. 「幸せの構成要素」は、お金で買えない

残酷な事実ですが、人を自動的に幸せにする要素(家族、友人、健康、生きがい)は、市場で売っていません。これらは自分のリソースを使って、自力でビルド(構築)するしかない。 お金はこの土台を作るためのツールにはなり得ますが、幸福の構成要素そのものではないという指摘。 資産額(数字)を増やすことに没頭するあまり、この「非金融資産」のメンテナンスをおろそかにしていないか? 定期的なチェックが必要です。

3. 「貯蓄」の定義変更:それは「権利」の購入である

これまで貯蓄を「資産の積み上げ」と捉えていましたが、本書の定義はもっと機能的でした。 「貯蓄とは、誰にも縛られず、好きな時に好きな人と好きなことができる『権利』の獲得である」

この理屈は非常に腹落ちしました。 貯蓄自体を目的化すると虚無になりますが、「経済的自立」を買っているのだと思えば、倹約も投資も全く苦になりません。 私たちは数字を貯めているのではなく、未来の自分への「選択肢」を貯めているのです。

4. アイデンティティは「少ない」方がいい

「私はバリュー株投資家だ」のような強いアイデンティティ(ラベル)は、実は危険です。 自分の定義をガチガチに固めすぎると、そこから外れる情報への感度が下がり、変化に対応できなくなる。 合理的であり続けるためには、状況に応じてアイデンティティさえも書き換える柔軟性が必要です。

5. 「後悔の最小化」フレームワーク

結局、人生の決断において最も有効な指標は「リターン最大化」ではなく「後悔の最小化」かもしれません。 80歳の自分が振り返った時、その選択をどう思うか? 数式では解けない難問ですが、このフレームワークを常にバックグラウンドで走らせておくことは、投資判断においても重要だと感じました。

6. 子供への「貧しさ」というギフト

「君たちは人生のある段階で『貧しさ』を欲している」というパラドックス。 お金の本当の価値を知るために必要な「欠乏体験」を、資産を持った親がどうデザインするか。これは今後も悩み続けるテーマになりそうです。

読み終えて感じたのは、「自分の認識(仮説)は間違っていなかった」という安堵感でした。

投資家として、あるいは一人の人間として、「合理性」と「感情」の間で揺れ動くことはバグではありません。むしろ、その揺らぎの中にこそ人間らしい「最適解」がある。

2026年も、数字(ロジック)を直視しつつ、自分の心が躍る(ロマン)投資を続けていこうと思います。 まだの方はぜひ、一読をおすすめします。自己分析の精度が格段に上がりますよ。

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