東証に降り立った「黒船」Appier Group (4180)。日本株の物差しでは測れない、その異質な正体

東証に降り立った「黒船」Appier Group (4180)。日本株の物差しでは測れない、その異質な正体

Appier Group (4180) (エイピア)の有価証券報告書を読み解くほど、

「これは本当に日本の上場企業なのか?」

という違和感が確信に変わります。 彼らは日本市場に上場していますが、その実態は「日本企業」ではありません。たまたま資金調達の場(上場先)として日本を選んだだけの、バリバリの外資系テック企業です。

https://www.appier.com/ja-jp/financial-results

そのため、Sansanやヤプリといった日本のSaaS銘柄と比較して割高・割安を論じること自体、あまり意味がないことに気づかされます。 知れば知るほど「不気味」で、だからこそ興味深い。その正体を、読み解こうとしています。

「インバウンドIPO」という特殊な出自

まず、国粋主義的には残念ながら、Appierは「日本で生まれて世界を目指す」企業ではありません。

有価証券報告書によれば、かつての親会社はケイマン諸島登記の「Appier Holdings, Inc.」であり、2021年の東証上場に合わせて日本の持株会社を設立した経緯があります 。

実質的な事業の中核はシンガポールや台湾、米国にあり 、日本のAppier Group株式会社はあくまで「グループ統括機能」はあると日本の投資家や取引所に説明しつつも、1現地法人に過ぎない印象を拭い切れません 。彼らにとって日本市場は、「資金調達の場」なのです。皮肉なことに、今やっている東証改革前の状況を逆手に取って、株主還元しなくても上場を続けられたという制度を逆手に取ってきたみたいなことも考えてしまうではないですか。

経営陣のDNA:シリコンバレー・スペック

役員一覧を見ても、日本の典型的な企業とは全く異なります。日本人らしいお名前はファイナンス担当の方だけですね。

経営の中枢を担うのはAI科学者やグローバル企業の出身者たちです 。取締役会にはGoogle出身者や海外VCのパートナーが名を連ねており、意思決定の論理は完全にドラマに出てくるようなシリコンバレーやグローバルスタンダードのっぽい香り高いそれです 。

国境を無視する「M&Aの攻撃力」

「非・日本的」なスピード感は、M&A戦略に顕著に表れています。

直近の有価証券報告書には、フランスの「AdCreative.ai」を買収する契約が記載されています 。買収先としては非常にシナジーあるところです。過去には米国のWoopra社も買収しており 、世界中の技術をパズルのように取り込んでいくスタイルは、日本のIT企業が慎重になりがちな海外展開とは一線を画しています。

日本企業でこのレベルの海外M&Aを繰り出し続けるイメージがありません。第5期のサイバーエージェントに同じことができますか…

比較不能な「異質さ」と「不気味さ」の正体

過去にもトレンドマイクロやネクソン、LINEのように、海外発で日本市場で大きくなった「先輩」企業は存在しました。しかし、Appierにはそれらとも違う、独特の「異質感」があります。突き詰めると以下の3つに思います。

  • 比較対象がいない
    • 日本の既存SaaS企業とは成り立ちも構成も違いすぎるため、同列に並べて評価することが困難です。彼らの競合は世界のテックジャイアントであり、日本国内のシェア争いをしているわけではないからです。
  • ローカライズされない「不気味さ」
    • 日本が主要な収益源(北東アジア地域)であることは事実ですが 、サービス自体が過度に日本向けにローカライズされているわけではありません。
  • BtoBならではの距離感
    • さらに、彼らのビジネスは「AI SaaS」というBtoB領域です 。LINEのように消費者が日常的に触れるものではないため、我々からはその実態が見えにくく、それが余計に「得体の知れない巨大なシステムが裏で動いている」ような不気味さを引き立てています。

日本の重力に縛られていない稀有な存在

Appier Groupは、日本市場にいながらにして、日本の重力に縛られていない稀有な存在に思えます。 「日本企業らしくない」という違和感はおそらく正しく、生意気承知で申し上げると、むしろその「読めなさ」こそが、この企業のポテンシャルを示しているのかもしれません。

既存の日本株の物差しを捨てて挑まざるを得ない、これは日本語で読めるNASDAQ銘柄か。この「黒船」の動きを追ってみると、全く新しい景色が見えてくる実感がありますね。

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