ドーン (2303) の東証スタンダード上場維持の攻防。メインシナリオを考える。
何度か記事にしてきましたが、今年は多くの企業にとって東証による「審判の年」となります。東証の市場再編に伴う「経過措置」が終了し、上場維持基準をクリアできるかどうかの回答期限が到来するからです。
今回は、ポートフォリオの一角にもあります。ドーン (2303)が東証スタンダードの上場廃止について、不確定な変数を整理し、自分の中での投資シナリオを「確定」させたいと思います。事前にシナリオを整理して「もしこうなったら、こう動く」というアルゴリズムを組んでおくことこそが、個人投資家の生存戦略だからです。所詮、私みたいな素人が規律ある行動を取れると努力すると言っても遵守できるはずがありませんよ。ぐらいの感じで行きます。
ドーン (2303) という「堅牢なレガシー」
まずは基本スペックのおさらいです。 ドーンは、地理情報システム(GIS)や自治体向け防災アプリを手掛ける企業。エンジニア的に言えば、「地味だが社会インフラとして不可欠なミドルウェア」を提供している会社です。
- 無借金経営。2025年8月31日時点で現金及び預金は16億4,089万円
- ストックビジネス比率が高く、高利益率だが低成長
- 東証スタンダード
一見、優良企業ですが、「豊富な現金を有効活用しきれていない」という課題を抱えています。
「流通株式時価総額」というブラックボックス
東証スタンダードの維持基準の一つである「流通株式時価総額 10億円以上」。 この判定に使われる「流通株式数」の厳密な定義は、実は東証の裁量(実質的な保有目的の判断など)が含まれるため、かなり調べたのですが、事前に正確な数字を知ることはできなさそうです。株主構成からちゃんと判定する方法もありそうですが、個人投資家には工数的に難しいと思います。
ただ、確実なファクトが一つあります。 2025年5月末時点の判定においては、この基準をクリアしているということです。
仮説変数としての「浮動株比率 60%」
正確な値は不明ですが、過去の記事でも考察しましたが、東証の定義する「流通株式」と、一般的に四季報などで用いられる「浮動株」は定義が異なります。
そこで今回は、現状の推計を行うためのプロキシ(代替指標)として、同じ東証が出している「浮動株比率 60%」という数値を適用して計算を行うことを考えました。これは「浮動株時価総額」という別の数字を出すためのものなのですが、今のところこれ以上の数字がないのです。
- 発行済株式数:330万株
- 流通株式数(仮定):330万株 × 60% = 198万株
- 現在の流通時価総額:2,481円 × 198万株 = 約49億円
現状の株価水準であれば、基準(10億円)に対して十分なマージンがあります。これは「現在の株価が高いから」成立している状態です。配当・株価の割安さからすると、過度に心配することはなさそうです。
MBO(非公開化)の再計算:資金的なハードル
では、この「浮動株60%」というパラメータを使って、以前検討した「MBO(経営陣による買収)」の実現性を再計算してみます。 「資金調達の面で極めてハードルが高い」という結論でした。
MBOを行う場合、経営陣(約30%保有)以外のすべての株、つまり「残り70%(浮動株60%+光通信等の外部保有分)」を買い取る必要があります。
- 買収対象:全体の約70%
- 対象株数:約231万株
- 想定TOB価格:3,200円(現在株価2,481円に約30%プレミアム)
231万株 × 3,200円 = 約74億円
ドーンの年間純利益(数億円)に対して、約60億円もの借入(LBO)を行う計算になります。 これは財務レバレッジとしてあまりに過大あるように見えてしまう水準です。(※そうでもなったりするのか…?専門ではないので分かりません) 株価が上昇し、かつ買い取るべき株数が多い現状において、「経営陣主導でのMBO」というシナリオを本筋にはできなさそうです。
光通信の「経済合理性」を読み解く
ここで重要な変数が、第5位株主である光通信 (4.56%) の存在です。 彼らは合理的な投資家です。「MBOが資金的に困難である」という現状は、当然把握しているはずです。株式投資で彼らの活動を見る限り、エグいほど合理的な集団に見えます。
では、なぜ彼らは保有を続け、あるいは買い増しているのか。私が考えられるシナリオは2つあります。
シナリオA:第三者への売却(TOB)
ドーンの持つ技術や顧客基盤を評価する「資金力のある第三者」への売却を狙っている可能性です。 不透明な部分が残ります。NTT (9432)・KDDI (9433)…いえ、何の根拠もない妄想です。光通信はジャストシステム(4686)のように、自社事業につなげて価値を出すように思えます。確率はゼロではありませんが、これをメインシナリオにするのは根拠が足りません。
シナリオB:還元の享受(メインシナリオ)
より現実的なのは、「配当や自社株買いによる利益享受の継続」です。 光通信は約25万株を保有しており、これは市場に対して一定の影響力(売り圧力)を持ち得ます。
- 光通信の視点
- 市場で大量に売れば株価が崩れ、自身の資産価値も毀損するため、メリットがない。
- ドーン側の視点
- 大口に売られて株価が下がると、上場維持基準への懸念が再燃するため、株価を維持したい。
この両者の利害関係を整理すると、「株価を崩さないために、会社側は株主還元(増配・自社株買い)を継続・強化する」という行動が、双方にとって最も経済合理性の高い「解」となります。
私のシナリオ
ここまでの分析を基に、私自身のシナリオを以下のように確定しました。ぶれてはいけない。所詮、私みたいな素人が規律ある行動を取れると努力すると言っても遵守できるはずがありません。なので、不測の事態が発生しない限り以下で動きます。といっても、光通信の思惑とほぼ同じなのですが。
1. メインシナリオ:株主還元の継続・強化
- MBOも第三者TOBも選択されない場合、そして、低成長の場合には、企業価値を維持する手段は「還元の強化」に集約されます。豊富な現金(16億円)を活用した増配や自社株買いが継続される可能性が高い。
- 大株主からの圧力により、高水準の還元が維持される限り、株価の下値は堅いという前提に立ちます。
2. サブシナリオ:第三者TOB(サプライズ)
- 70億円以上の価値を見出す買い手が現れた場合。
- 発生すれば大きなアップサイドが見込めますが、あくまで「オプション(おまけ)」として捉えます。
3. リスクシナリオ:需給の崩壊
- 経営陣が還元を拒否した場合、大口の売り手口が確認された時点で、株価がどうなっていようと即座にポジションを解消。
2026年、ドーンは重要な局面を迎えています。 しかし、「大株主と会社側の利害が『株価維持』で一致している」という構造自体は、我々個人投資家にとってもポジティブな要素です。
決算も近いので、1月~3月に経営陣から何らかの動きはある可能性は高いと信じてます。初心にて思い込みに乗らず、数字と論理(そしてロマン)に基づいた「還元期待のバリュー株」として、引き続き見ていきたいと思います。いつも飽きちゃうほど言ってることですが…