【銘柄分析】eBASE(3835)の自社株買いは「成功」か?5億円の投入で、既存株主が受け取る”7,500万円の隠れ報酬”について。
ポートフォリオの片隅で、eBASE(3835)が沈黙…いえ、さらに一段、水準を切り下げています。
一方では10月に発表された「上限5億円の自社株買い(発行済の2%超)」が現在も来年3月に向けて粛々と実行中です。予算が40%ぐらい消化というところですね。
2025年12月03日 自己株式の取得状況に関するお知らせ
本来なら強力な買い支えになるはずですが、株価は430円台を割り込む場面もあり、市場からは「もうこの銘柄はダメだ」と個人投資家が見限って投げているような、重苦しい雰囲気さえ感じます。他に魅力的なボラタリティがある銘柄は山のようにあるので気持ちは分かります。
そんな状況下でも、なぜ私は「プロセスをキルせずに常駐させる」を続けているのか?
それは、市場の「バグ(価格の歪み)」を検知し、自分なりの「保有し続けるための論理的な根拠」が言えるのが大きいと感じています。
今回は、私が心の平穏を保つために行っている計算と、現在進行形の自社株買いが生み出す「隠れた報酬」について書いていきます。
バフェット流「内在的価値」のデバッグ
株価が下がると不安になります。だからこそ、私は「株価(UI)」ではなく「価値(コード)」を見ようと努めています。
バフェットが好むアプローチを参考に、あえて「今後一切成長しない(成長率0%)」という、意地悪なほど悲観的な前提で、この企業の価値を試算します。
- 稼ぐ力(FCF): 年間 約12.5億円(直近純利益ベース)
- 成長率: 0% (未来永劫、横ばいと仮定)
- 割引率: 7% (資本コスト)
【試算結果】
- 事業の価値: 12.5億円 ÷ 7% ≒ 178億円
- 金庫の現金: ネットキャッシュ 約50億円(超・金持ち企業)
- 合計価値: 228億円
228億円 ÷ 4,500万株 ≒ 506円
「成長ゼロ」という散々な評価をしても、計算上の価値は506円ある。
今の株価(430円〜440円)は、そこからさらに15%もディスカウントされている。これは市場が「eBASEはこれから衰退していく」と誤認している「エラー(異常値)」ではないか?これが、私が恐怖にかられて売らないための、一つ目の論理的な防波堤です。
進行中の「5億円」が生む、7,500万円の隠れ報酬
そして今(10月〜3月)、会社は5億円を使ってせっせと自社株を買い集めています。ここで重要なのが、「安く買えば買うほど、残った株主が得をする」というメカニズムです。
具体的に計算してみましょう。
会社は、本来506円の価値があるものを、440円で市場から買い戻しています。
- 買い戻せる株数:5億円 ÷ 440円 = 約113万6,000株
- 買い戻した株の「本当の価値」:113万6,000株 × 506円 = 約5億7,500万円
- 差額(得した分):5億7,500万円 - 5億円 = +7,500万円
会社は、自社株買いを実行するだけで、「7,500万円分の価値」をノーリスクで創出したことになります。
この浮いた7,500万円分の価値はどこへ行くのか?売らずに残った、私たち既存株主の持分(1株あたりの価値)に、静かに上乗せ(マージ)されるのです。
これこそが、市場には見えない「隠れ報酬」の正体です。
「バックグラウンド処理」の完了を待て
さらにバフェットは言っています。
「自社株買いをする企業にとって、株価が低迷し続けることこそが良いニュースである」
※これを読んだとき、なかなかのコトを仰られるおじいさんだな…と感じた
なぜなら、株価が安ければ安いほど、同じ5億円で「より多くの株」を消却でき、上記の「隠れ報酬」が大きくなるからです。
- 株価上昇: 見かけ上の資産は増えるが、自社株買いの効率(パフォーマンス)は落ちる。
- 株価低迷: 見かけは悪いが、水面下で「1株あたりの価値」が効率よく圧縮・凝縮されていく。
今のeBASEの「退屈なジリ安」は、システム最適化のための「重たいバックグラウンド処理」が走っている時間だと考えることはできないか。
処理が終わる(自社株買い完了)まで、画面(株価)はフリーズしたように見えるかもしれませんが、内部データ(企業価値)は確実にリファクタリングされています。
これは「待てる人」への報酬
もちろん、これは私の勝手な試算であり、正解かどうかは分かりません。
しかし、1日の売買代金が数千万円しかない過疎銘柄において、「毎日コツコツと5億円分の買いが入っている」という事実は、物理的な需給の下支えとして機能します。
- 市場: 退屈に耐えられず、見限って売っている。
- 会社: その売り物を、内在的価値より安い価格で淡々と拾っている。
- 私: その「価値の移転」プロセスを、ログを見るように静観している。
今の株価下落は精神的にはキツいものですが、「会社が安値で自社株買いを進めるためのボーナスタイムだ」と解釈すれば、この退屈な時間も、将来のリターンを高めるための必要な工程に見えてきます。
3月の自社株買い終了まで、あるいは市場がその価値に気づくまで。私はこの「論理的な言い訳」を握りしめて、もうしばらくこの岩盤の上で昼寝を決め込もうと思います。