【投資の悟り】私がやっているのは「資産形成」ではない。「株」というインターフェースを通じた、むっつりスケベな「推し活」だ。
職場で投資の話をしない本当の理由。 それは「お金に汚いと思われたくないから」ではありません。 もっと根源的で、恥ずかしい理由があることに気づきました。
それは、私の投資スタイルが「アイドルの追っかけ(推し活)」と、構造的(Architecture)に何ら変わらないからです。
私が信越化学やeBASEについて熱く語るのは、アイドルオタクが「推しの尊さ」を早口で語るのと全く同じ。 対象が「3次元の人間」か「法人」かという違いだけです。
今回は、この「投資=推し活」説について、IT用語を交えつつ、私の歪んだ(しかし幸せな)内面を公開します。
投資行動の「推し活」への変換(マッピング)
私が夜な夜な行っているリサーチや売買は、推し活の用語に変換すると、恐ろしいほど符号します。
- 株を買う(Buy) → 「投げ銭(Super Chat)」。 私の資金が、推し(経営陣)の活動資金となり、彼らが輝くための燃料になる。「俺が支えている」という自己満足(User Experience)の極み。
- 決算書を読む(Analyze) → 「Wikiや過去動画の深掘り」。 推しの歴史や隠された魅力(含み益や技術力)を発掘し、「みんなは知らないけど、俺は知っている」と悦に浸る行為。
- 株価が上がらない(Lag) → 「地下アイドル時代の下積み」。 「今は評価されていないが、実力は本物だ。いつか武道館(プライム市場)に行こうな」という、古参ファン特有の連帯感。
私は「資産を増やしたい」というより、「イケてるビジネスモデル(推し)が、世の中に認められていくプロセス(Scalability)を、株主という特等席で見守りたい」だけなのかもしれません。
経営者への「勝手なLGTM」
ITエンジニアとして、私は優れたシステム構造や、美しいコード(経営戦略)を見ると興奮します。
信越化学が830億円をキャッシュで投資した時、私は心の中で叫びました。 「その仕様変更、最高だ! LGTM(Looks Good To Me)!」
リクルートが逆風下で単価を上げた時、私は唸りました。 「そのUI/UX改善(値上げ)、強気で痺れるね!」
株を買うという行為は、経営陣が書いたコード(戦略)に対して、私なりの「承認(Merge Requestの承認)」を送る儀式なのです。 経営者が私のことなど知る由もありませんが、「俺の資金が、この美しいエコシステムの一部として稼働している」と想像するだけで、脳内麻薬が出ます。
これはもはや、合理的な経済活動というより、「高度な偏愛の実装(Implementation)」です。
「むっつり」でいい。布教はしない。
アイドルオタクと違う点が一つだけあります。 それは、「布教(Evangelism)する気がない」ということです。
推し活は「みんな見て!」と拡散しますが、バリュー株投資家は「むっつり」です。 自分だけの秘密のデータベース(ローカル環境)で愛でていたいし、他人に教えて株価が上がってしまったら、安く買えなくなって困るからです。
- 宗教: 信者を増やしたい。
- 投資: 独占したい。
私は、この「誰にも言わずにニヤニヤする」というクローズドな環境を愛しています。 だから会社では、「NISA? よく分かんないっすね」とすっとぼけて、平凡な会社員を演じ続けます。
資産形成は「ログ出力」に過ぎない
推し活にお金を注ぎ込むと、財布は軽くなります。 しかし、この「株式投資という推し活」には、とんでもないバグがあります。
「推しが成長すると、なぜか自分の資産も増えている」
熱狂して、応援して、ニヤニヤしていたら、結果として資産が形成されていた。 これは目的ではなく、推し活の結果として出力される「ログ(Log)」や「副産物(Artifact)」に過ぎません。
「偏愛を追求していたら、老後資金が解決していた」 これこそが、資本主義というOSがバリュー投資家に提供してくれる、最高のユーザー体験(UX)なのです。
明日も私は、誰にも言わずにトイレの個室で、愛する企業(推し)のチャートを見てニヤつくことでしょう。 この「むっつりとした幸福」こそが、私が投資を辞められない最大の理由なのです。