ROIC 15%のユニクロと、PER 30倍のyutori。結局、今の株価は「お買い得」なのか?
前回の記事では、アパレル・靴小売5社の「中身(ROIC)」を解剖しました。
「稼ぐ力」の構造は分かりました。しかし、投資家の仕事はここで終わりではありません。
「いい会社なのは分かった。で、今の値段は高いの? 安いの?」
スーパーでA5ランクの和牛が美味しいのは当たり前です。問題は、それが「100グラム5,000円」で売られている時に買うべきかどうかです。
株式投資において、「優秀な会社」と「優秀な投資先」はイコールではありません。すべては価格(バリュエーション)次第です。
今回は、前回分析した5社の「実力(ROIC)」に対し、市場がつけている「値札(PER/PBR)」が適正かどうか、冷徹にジャッジしていきます。
1. 値札の比較(バリュエーション一覧)
まず、各社の主要指標を横並びにして、市場の期待値を可視化します。(※数値は執筆時点の概算)
| 企業名 | ROIC (実力) | PER (期待値) | 私の印象 |
| ファストリ | 15.6% | 35〜40倍 | 王者の貫禄(高い) |
| yutori | 12.3% | 30〜40倍 | 成長への熱狂(高い) |
| パルグループ | 14.5% | 16〜18倍 | なぜか評価が低い |
| ABCマート | 11.8% | 18〜20倍 | 極めて適正(普通) |
| ダブルエー | 9.7% | 12〜15倍 | 不人気ゆえの割安 |
こうして並べると、市場の「偏愛」が透けて見えますね。
2. 市場はどう値付けしているか?
ROIC(実力)とPER(期待)のギャップから、市場心理を読み解きます。
A. 「プレミアム(割高)」グループ
ファーストリテイリング & yutori
この2社は、PER 30倍〜40倍。市場平均(15倍程度)の倍以上の値札がついています。
「和牛100グラム 5,000円」の世界です。
- ファストリ: 「世界一になる会社だから、高い金を払ってでも持ちたい」というクオリティ・プレミアム。
- yutori: 「もっと成長するはずだから、今のうちに買っておけ」というグロース・プレミアム。
今の株価には「成功して当たり前」という期待がパンパンに詰まっています。
美味しいですが、少しでも焼き加減(決算)を間違えれば、期待が剥落してナイアガラを起こすリスクと隣り合わせです。
B. 「バーゲン(歪み)」グループ
パルグループホールディングス
今回のリストの中で、最も**「実力と評価のバランスがバグっている」**のがここです。
ROICは14.5%とファストリに迫る高水準なのに、PERは10倍台後半と常識的。
「3COINS」などの雑貨事業が好調ですが、市場はまだ「雑貨屋でしょ?」と軽く見ているのかもしれません。
数字だけで判断するなら、最も合理的なエントリー候補に見えます。
C. 「ディスカウント(不人気)」グループ
ダブルエー (7683)
ROIC 9.7% に対し、PER 12〜15倍。
5社の中で最も「期待されていない」銘柄です。
堅実な経営をしていますが、yutoriのような派手な成長ストーリーがないため、機関投資家やイナゴ(短期筋)が集まってきません。
いわゆる「流動性ディスカウント」により、実力よりも安く放置されている状態です。
結論:それぞれの「買い」の根拠
以上の分析から、投資スタンス別の適合銘柄はこうなります。
- 「王道を行く」なら: パルグループ
- 高ROICかつ、過熱感がない。教科書的な「GARP(成長割安株)」投資のど真ん中です。
- 「夢を買う」なら: yutori / ファストリ
- 指標は割高ですが、モメンタム(勢い)は最強です。「高いものがさらに高くなる」順張りの世界。
- 「負けない」なら: ダブルエー / ABCマート
- 低PERで下値が堅い。大勝ちはしませんが、夜ぐっすり眠れます。
あえて私が選んだのは
最後に、この分析を経て私が実際にポートフォリオに入れた銘柄を明記しておきます。
私の選択は、ダブルエー (7683) です。
「一番地味なやつじゃないか」と言われそうですね。
確かに、yutoriのような爆発力も、パルグループのような華やかさもありません。
しかし、私は婦人靴というニッチ市場で見せている彼らの「AI在庫管理(ROICの質の高さ)」を評価しています。
何より、PER 12〜15倍という水準は、これ以上大きく下がるリスクが限定的です。
「市場の期待が低い」ということは、裏を返せば「良い決算が出た時のサプライズ(伸びしろ)が大きい」ということ。
みんなが熱狂している高PER株を横目に、誰も見ていない地味な優良株を安く拾う。
この天邪鬼なスタイルこそが、私の投資家としての生存戦略なのです。